言葉を知ることは世界が変わること、といっても過言ではない。
1歳の頃に熱病を患い三重苦を負ったヘレン・ケラーは、「水」には「water」という名前があることをサリバン先生に教わり、そのときの感動を次のように残している。
井戸を離れた私は、学びたくてたまらなかった。すべてのものには名前があった。そして名前をひとつ知るたびに、新たな考えが浮かんでくる。家へ戻る途中、手で触れたものすべてが、いのちをもって震えているように思えた。『奇跡の人 ヘレン・ケラー自伝』 p.35

ケラー自伝
彼女のこの奇跡的な体験とはかけ離れてはいるが、私たちが新しい言葉を学ぶときにも似たような感覚が得られる。
たとえば「おもねる」という言葉を知ったとき、自分や他人が取る「おもねる」という行動に気づき始める。私は誰におもねて、誰におもねられて、そして人はなぜおもねるのか、新しく思考を巡らすことができるようになる。言葉を知ることで、自分の生きる世界が違って見えてきたり、実際に行動が変わり始めるのだ。よって、言葉を知ることで世界が変わると言っても過言ではない。
一方で、実務翻訳者にとって言葉は仕事に必要な道具である。実務翻訳は結局のところ、ある状況下にぴったりはまる言葉を探す問題解決ゲームのようなものとも考えられるので、その解決手段となる言葉は多く身につけておいたほうがいい。インターネットや辞書のなかで必要な言葉を探して解決することもできるが、あらかじめ言葉を記憶しておくとその解決速度が大幅に上がる。
それに、自分のなかの言葉のネットワークから適切な翻訳を手繰り寄せるのと、辞書にある言葉のネットワークを活用して翻訳を生み出すのとでは、そもそも頭の使い方が違うので異なる翻訳が生まれる気がする。どちらがよいのかはわからないし、ここはまだうまく言語化できないが、翻訳者としてアクティブワードを増やすのに越したことはないと思っている。
私は、上のとおり世界が広がる感覚が楽しい、かつ仕事で必要なために『WordHolic!』という単語帳アプリを利用して、脳に言葉を蓄えている。2020年からこのアプリを使い出し、ついに語彙を増やす習慣を作ることができた。というのも、先日、日本語フォルダーの単語登録数が1,000を超えたのだ。気になる言葉はほとんど自動で登録するまでになった。
読者の皆さんのためになると信じて、私のWordHolic!の利用方法を記しておく。受験のときに単語帳による記憶が好きだった人に特におすすめしたい。
WordHolic!の使い方
私のWordHolic!の使い方と目的は次のとおり。
目的:知らない言葉を覚えたり、知っているけどうまく使えない言葉をアクティブワードにする
方法:
(1) 本や動画などすべての文字コンテンツを体験しているときに「身につけたい!」と思える単語や表現がないかアンテナをつねに張っておく。
(2) 身につけたい言葉があったら、WordHolic!にすぐに登録する(かならず用例もセットで入れる)
(3) ときおり、見返して記憶する(音声読み上げが便利)
以下に方法の(2)と(3)について説明する。
WordHolic!に言葉を登録する
まずは開いてすぐのメインページで「新規作成」から対象言語のフォルダーを作る。私はたんに日本語を学ぶためのフォルダーは「日本語」、英語を学ぶためのフォルダーは「英語」としている。

作成したフォルダーに入り、最初にカードの読み上げ設定をしておく。右上の三本線 > 「設定」 > 「カードの新規作成設定」に進み、「音声言語」の表面と裏面を対象の言語に設定する。

新しく言葉を登録するには、真ん中の方の「新規作成」を押す。

カードの新規作成ページに移るので、登録したい言葉を「表面」に入れる。以下の例では「腹を探る」を入れている。

次にその下の「裏面」に用例を記載する。スマホで電子書籍やデジタル新聞を読んでいる場合は、該当箇所をコピペすればいい。

必要であれば下の「コメント」欄に、言葉の意味を記載できる。するとカード表示時にいつでも確認できるようになる。

最後に最下部の「保存」を押せば登録が完了となる。
ときおり見返して記憶する
言葉を登録して終わりとするのではなく、ときおり読み返すことで記憶に定着させることができる。パラパラとめくるだけでもOKだが、以下の「読み上げ再生」法をおすすめしたい。
読み上げ再生
読み上げ再生は、自分の登録した言葉をAIが読み上げてくれる機能。これを使えば、歩きながらでも言葉を学ぶことができる。
読み上げる面や読み上げスピードは自由に変えられるが、まずは次のような設定をおすすめする。

あとは左上の「再生」ボタンを押すだけで、順々にカードが読み上げられる。
使いこなしのコツなど
WordHolic!を使いこなすためのコツや注意点を以下に記載する。
・「バックグラウンド再生プレイヤー」をオンにすると、バックグラウンド再生が可能になるがこれは有料のプレミアムプラン限定の機能。
・カードがうまく読み上げられずスキップされることがある。その場合は、「編集」>「一括(このフォルダーのカード全て)」>「表面の音声言語を一律変更」で対象の言語に設定する。必要があれば、同様に「裏面の音声言語を一律変更」も設定し直す。
・上記に関わらずAIの性能の問題で、日本語の漢字がうまく読み上げられないことがある。これはしょうがない…私は丸かっこに正しい読み方を入れたりして、気づけるようにしている。
・カードをシャッフルしたい場合は、「表示設定」から「並び替え」の「シャッフル」を選択して条件を適用する。
おわりに
いかがでしたか。今回は、語彙を増やす助けとなる単語帳アプリ『WordHolic!』の使い方を説明させていただきました。
私がこれまでに1,000の語彙を登録するまでこのアプリを続けられたのは、その使い勝手の良さにあります。何か気になる言葉があればさっとアプリを開いて登録。空いた時間にぱらぱらとみて記憶。たまに歩きながら再生読み上げで記憶。スキマ時間で勉強できること、なにより「登録するために用例を作ろう、探そう」と思えるのがすばらしいです。
単語帳アプリを活用したスムーズな登録と記憶は語彙のネットワークを広げる助けになります。皆さんもぜひ使ってみてくださいね。
それでは、また。
